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PNFの哲学と基本原理 

こんにちは、まえぴです

昨年からPNFの勉強を続けていまして、PNFの哲学がなんとなくわかってきました。細かい、触り方やそれぞれの体の動かし方(パターン)についてではなく、基本原理をまとめていきたいと思います。PNFが1940年ごろに提唱されて、現在も続いているということは少なくとも間違った理論ではないことだと思いますので、これを機にPNFに対する理解を深めていってもらえたらと思います。

 

目次

 そもそもPNFとは、その定義。

日本PNF学会によると、以下のようにPNFの紹介がされています。数ある徒手療法、治療テクニックの一つと言えます。

1940年代の後半に、医師であるKabat博士がポリオ後遺症患者の筋収縮を高めるための生理学的理論を構築し、KnottとVossの理学療法士と一緒に開発した運動療法PNF (proprioceptive neuromuscular facilitaition;固有受容性神経筋促通法)である。

 PNFは、

Proprioceptive:固有受容性

Neuromuscular:神経と筋に関すること

Facilitaition:促通ー刺激に対して反応しやすくなること

これらの3つの要素のある英単語の頭文字をとって省略したものです。

PNFとは、生体組織を動かすことにより人体に存在する様々な感覚受容器を刺激し、神経、筋などのなたら気を高め、動作等を含む身体機能を向上させる方法のことです。方法というと、手技として開発されたように見えますが、現在はPNFは手技ではなく、コンセプト(概念)であるとされています。

促通(荷重)することで、

●神経ー筋の活動が活発になり動作の性質が変化する

●困難だった動作が楽にできるようになる

●よりスムーズに、より正確に、より早くできるようになる

これらをできるようになることがPNFの考え方を使う目的であると言えます。

 

PNFの哲学

PNFの哲学は以下の5つです。

1.ポジティブ・アプローチ Positive approach

2.機能的アプローチ Functional approach

3.潜在能力 Mobilize reserves 

4.全体像をとらえる Consider the whole person

5.運動制御理論と運動学習理論の利用 Use of Motor Learning and Motor Control principles

 

1.ポジティブ・アプローチについて

患者さんにできないことをさせようとしない。患者さんが今できることは何か、今患者さんにしてもらえることはなんだろうか、それを考えて提供することだと言えます。

運動を引き出す際に、痛み刺激は邪魔になります。筋の出力を抑えるのは痛み刺激です。ですので、痛みのないように関わることは重要だと言えます。このように、様々な面でポジティブに捉える事が重要であるという哲学です。

2.機能的アプローチについて

国際生活機能分類ICF)の利用をし、機能を重視した評価と治療を行うことです。

これは、活動、参加を無視して機能訓練に重きを置くということではありません。

全ての関わりは対象者の活動と参加に焦点を当てて行わなければいけない、といけないと思います。例えば関節可動域を広げる事や、筋力を強くする事は、最終的には対象者の活動や参加に繋げていく視点です。

 

例えば『股関節屈曲制限』という障害があったとしても歩ける人は歩くことができます。歩けることで参加できるとします。だとすれば、股関節屈曲制限は別に障害ではありません。しかし、股関節屈曲制限の原因で歩き方がおかしくなっていて、その歩き方をしているために、反対の下肢の異常な筋緊張や、腹筋に比べた背筋の相対的な過緊張、腰椎の過度な前弯など構造的に体のゆがみが生じたとします。その歪みが持続すると、疼痛や変形など二次障害が予測され近い将来参加が阻害されると予測されるのであれば、なにかしらのアプローチが出てくる可能性はあります。

このように障害を捉えるのに”機能面”の問題を言うのではなく、参加や活動が阻害されている状態を障害と捉えることがICFで謳われていることのように思われます。

つまり、『障害とは、機能の制限ではなく活動や参加の制限』であると言えます。

その点を押さえた上で、活動・参加の制限の原因となる機能の程度にアプローチ、すなわち機能的アプローチをとらえていきましょう。

 

3.潜在能力

積極的に患者の参加を促し、潜在能力を引き出すことは重要です。その引き出した能力を集中的なトレーニングによって、学習し日常の中で使えるようにする必要があります。また、取る姿勢(背臥位・腹臥位・座位など)、活動、そして環境を変えて練習する必要があります。

 

また、引き出した潜在能力を運動学習させ日常に使えるようにしなければいけない。その為には繰り返し練習する必要がある。また、日常生活で考えられる肢位や方法で練習する必要があります。

積極的な参加とは、ホームプログラムや家族支援といった自主トレーニングプログラムの中でこそ活きてきます。セラピストがいなければ、できないプログラムというのは、本当の意味で自立ではなく、セラピストに依存している状態と言えます。繰り返しの練習の中で、如何にセラピストの手を触れないように運動を促すかが重要だと思われます。

4.全体像を捉える

 ICFを活用して全体像を評価するということであると言えます。

 

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ICFの概念図

5.運動制御理論と運動学習理論の活用

運動制御(Motor Control)には、

1.Mobility(可動性):運動を開始したり、十分に動くことができること

2.Stability(安定性):肢位(姿勢)を安定させることができること

3.Mobility on Stability(安定性の中での可動性):安定性の中での運動性があること

4.Skill(巧緻性):ある肢位から動くことができ、安定した体幹と四肢とその環境をコントロールできること

これらの順番に難易度が上がっていくと言われている。

特に、3番目のMobility on Stabilityは重要な考え方だと思っています。例えば、肩甲胸郭関節の安定性(Stability)があることで、肩甲上腕関節の可動性(Mobility)があります。また、on elbowで体幹を床から浮かせた状態を維持(Stability)することで、片方の手を前方に伸ばすこと(Mobility)が生じます。あらゆる運動にこの考えが適用されます。

そして、4番目のSkillは、座位姿勢を保てる(Stability)があって、上肢、手指の可動性(Mobility)が可能となり、さらに上肢・手指で何か活動をするとなった際は、Skill(巧緻性)が必要です。姿勢が安定し、末端の可動性があるだけではなく、実用的にするためには、最終的には巧緻性が必要だということだと思います。

 

運動学習(Motor Learning)には

1.Cognitive Stage(認知段階)

2.Associative Stage(連合段階)

3.Autonomous Stage(自律段階)

と段階があります。

運動課題を実行するために、多くの戦略が試みられます。ある運動パターンを患者に行わせたいときは、他動的に患者の関節を動かす(他動運動)からはじめ、そこから、患者にも一緒に関節を動かしてもらう(自動介助運動)、患者に動かしてもらう(自動運動)と徐々に患者に自律して運動してもらえるように介入していきます。

 

PNFの基本原理

基本原理には12項目あります。その中の以下の3つが治療の原理として使われます。

1.最適な抵抗

2.関節刺激(牽引と圧縮)

3.伸張刺激

 

1.最適な抵抗

最適な抵抗とは、自動運動が全可動域を滑らかに運動できる程度の抵抗量のことです。患者がその抵抗に対し、震え始めたらその抵抗は強すぎて最適とは言えません。この抵抗は、単純に筋活動の促通や筋力強化だけでなく、運動方向をわかりやすくすることも目的になります。抵抗のある方向に対して、患者が力を加えることができます。なお、このとき、セラピストはセラピストの指で抵抗を掛けますが、できるだけ手の力を抜いて行うことが大事です。セラピストは患者の反応を見なくては感じなくてはいけません。できるだけ、手の力を抜いてセラピストの体で抵抗を掛ける感じで行うことが良いとされます。そのためには、関節運動方向にあった適切な位置にセラピストはポジションを取らないといけないです。セラピストの手は抵抗を加える運動効果器であるのと同時に、患者の反応を感じる受容器でもあります。

 

2.関節刺激

関節刺激とは、関節の中にある固有受容器を刺激することで、方法は牽引と圧縮があります。

牽引は、徒手による関節周囲の組織を伸張することです。

目的は筋の反応と運動を高めることです。

圧縮は、徒手による関節周囲の組織を圧迫することです。

目的は関節の安定性の促進、体重負荷や抗重力筋の収縮の促進、同時収縮による安定性の促進することです。

注意点としてどちらの方法も、関節に不安定性があると疼痛が引き起こされることがあることです。

 

3.ストレッチ

いわゆる普通のストレッチは、エロンゲーション(Elongation)と言います。PNFでのストレッチは、エロンゲーションにクイックストレッチを加えたものです。クイックストレッチは、筋に速い伸張刺激を加えるストレッチです。筋の収縮を促進し、弱い筋群の反応時間の促進を目的とします。

 

すぐに使えるテクニック

PNFテクニックは10個に分類されていますが、そのうち2つ紹介します。すぐに臨床で使えそうなものをピックアップしました。

1.Combination of Isotonics:筋のコントロールを教える

筋の収縮の種類を意識して患者に行わせる運動を考慮します。例えば、持続性の収縮からはじめ、次いで異なるタイプの求心性収縮、遠心性収縮をさせます。目的は筋運動のコントロール、筋活動や持久性の向上、協調的な筋活動の賦活などです。

2.Repeated Stretch through range:運動時の筋収縮を高める

セラピストが目的とする筋群に十分なエロンゲーションを加えた状態にもっていきます。伸張反射を誘発させるには、クイックストレッチを必要な筋群に加えます。この時に、セラピストは口頭指示を出して、患者自身の随意的な努力の筋の収縮を引き出すことができます。運動中に、患者の随意運動や筋収縮が低下したと感じられたら、再びクイックストレッチを行い、再度筋紡錘を刺激し伸張反射を誘発します。

 

まとめ

PNFの哲学と基本原理は以上となります。

上記に紹介した哲学は、PNFの参考書等に記載されているものよりも端的で説明が省かれています。また、基本原理は12個、テクニックは10個と実際はもっと多く、細かく分類されています。このブログだけではPNFの理解する最初のステップとして、もっと勉強したい場合は、参考書や各地で開催されるPNFのセミナーに参加されることをお勧めします。